TU-870 製作レポート


エレキットで有名なイーケイジャパンの 25 周年記念限定真空管パワーアンプキットのうち,TU-870 を作りました.

イーケイ (嘉穂無線といった方がピンと来ますね) は以前にも真空管アンプのキットを出していましたが,今回のシリーズはとくに外観が大幅にかっこよくなっています.

このアンプに使われている真空管は 6BM8 です.電圧増幅用の 3極管と電力増幅用の 5極管がひとつのチューブに入っている MT 管で,キットに入っていたのはユーゴスラビア製でした (日本では 1979 年に通常用途の真空管の製造は終了しています).

回路的には,ドライバ段と出力段は CR 結合,両段とも調整不要の自己バイアス回路,出力段は 5極管接続 (5結)A級シングルの回路になっています.5結になっているので出力はそれなりに取れ,プレート電圧約 200V で 1次側 5kΩの負荷で,2W + 2W の連続出力とカタログ上はなっています.

入力は2系統あり,CD とカセットを切り替えて使うということができます.

旧シリーズにも同じタマのセットがありましたが,出力が大幅に増えています (0.7W → 2W).旧シリーズのは 3結だったんですかね?

部品です.回路は基本的にプリント基板上に作るので,真空管を扱うのは初めてでしたが簡単に作ることができました.

プリント基板上に部品を付けたところです.今回はオプションのグレードアップキットも一緒に買ってきたので,電源回路の平滑コンデンサが2つ (100μF × 2) になっています (右下の大きい電解コンデンサが追加分).真空管のソケットは裏側 (銅箔面) に付いています.

電源トランスです.Rコアタイプという,音響用にはいいタイプらしいのですが,ちょっと見た目はかっこよくないですね.実際にはカバーがかかるのでこの状態は完成後は見えません.ちなみに電源は CR 平滑回路で,チョークは使っていません.

基板をシャシに取り付け,内部配線をします.現実問題としては,この配線が一番難しい部分です.電源スイッチ,入力切替スイッチが結構隅のほうにあるので半田付けがやりにくいのです.とくに入力切替スイッチは狭苦しくてちょっとやりにくいですね.なお,全体にマニュアルに書いてある配線コードの長さは長めなので,現物合わせのほうがいいかもしれません.トランスからのケーブルは混乱しないように気をつけましょう.

真空管を挿したところです.この状態で音出しをして動作確認をします.今回は無事一発で音が出ました :-) やはりヒータがぽーっとオレンジになって音が出てくると感動しますねぇ.

フロントパネル,ボリュームつまみ,そしてオプションのチューブプロテクタを付けて完成です.ここまでだいたい 3時間半強というところでした.

試聴中です.ヒータが灯っているのですがわかりませんね(^^; 右側のチューブのオレンジの光点が写ってることは写ってるんですが (^^;

音ですが,小型スピーカで聴いているかぎりでは十分な音質です.ミニコンポのスピーカにつないで試聴した結果は,コンポ本体のアンプで鳴らすよりも広がり感があっていいくらいでした.出力的には同程度の廉い IC パワーアンプ (IC の値段が数百円) と比較すると,歴然と違います.同じスピーカで聴いていても,ラジカセとオーディオのような差が感じられます.5結だからといって歪みを感じるわけでもなく,S/N 比も問題ありません.なかなかいい感じです.ソースもピアノ,オーケストラ,コンボ,どれも意外なくらいそつなく鳴らします.ビッグバンドを大音量で,とかなると,さすがにパワー的に苦しくなりますが,ふつうのサイズの部屋で,ふつうの音量で聴く分には問題になることはまずないんじゃないでしょうか.

総合評価 (音質,価格,見栄え,製作の楽しさ,なども全部コミで) は文句なく

☆☆☆☆☆

(満点) ですヽ(^o^)ノ
2A3 や 300B を使ったもっと高いキットもあるのですが,これも期待できますね.

といっても,次に真空管アンプを作るときは,キットでなくバラパーツでやりたいところですが :-)

2000.9.18. 追記 結局,EL34 シングルを作りました.



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